はじめに 以降はComputone Wind Synthesizer DriverのService Manualの翻訳です。非常に親切なサービス・マニュアルで各回路の説明や、動作原理にいたるところまで記述されており感心させられます。なるべく原文に忠実に翻訳を試みていますが、明らかに誤りと思われる部分は修正しております。 Wind Synthesizer Driverは製造されていた当時、度重なる改良が施され、いくつものバリエーションが存在します。したがって完全にすべてのバージョンに適応できないことをご承知置きください。 オリジナルの状態を保っている個体については、製造時から既に30年近く経過しており、部品の経年劣化によりもとのスペックを保つことは非常に困難な状態にあると思われます。特に数個のコンデンサー(交換必須)やドライヴァに多用されているスライド VRやスイッチ類についても、新品の部品と交換されることを強くお勧めします。 日本国内で使用されるユーザーは、電源も入力AC100Vに合わせて新しく製作されることをお勧めします。(電源コネクタの形状も)
Wind Synthesizer Driver サービス・マニュアル
1.1 一般 リリコン・ウインド・シンセサイザー・ドライヴァはプレイヤーにキーボードをバイパスさせて、音源を直接コントロールすることを可能にした全く新しい楽器です。 ウインド・シンセサイザー・ドライヴァはプレイヤーにアコースティック楽器によって得られる音楽表現とスタイルをそのままシンセサイザーに導入することを可能にさせます。 ウインド・シンセサイザードライヴァによって成し遂げられる音楽表現の幅はフットペダルやアタッチメントや特別なパッチなど既存の鍵盤シンセサイザーには事実上真似することが不可能です。 ウインド・シンセサイザー・ドライヴァの楽器本体(コントローラ)の部分は外観、運指ともにソプラノサックスに似ています。3種類のコントロール信号がコントローラによって生成されます。まず唇の動き、2番目に息の圧力変化とアタック、3番目に運指です。ウインド・シンセサイザー・ドライヴァのコンソールは、これらのコントローラからのコントロール信号を既存の鍵盤シンセサイザーとコンパチブルな形式に変換し、既存シンセサイザーとパッチングするための出力ジャックやスイッチを備えています。 限定的な機能しかないシンセサイザーと簡単にパッチするだけでも、プレイヤーは才能とイマジネーションの趣くままに、繊細で表現力豊かな演奏をすることが出来ます。 2.1 一般 ウインド・シンセサイザー・ドライヴァは(1)ボディ、(2)コンソールの2つの主要な部分から構成されます。 ボディはシンセサイザーとプレイヤーの最初のインターフェースとなります。演奏者のコントロールの下に、以下の3種類の信号を発生するように設計されています。 Ek − 押し下げられたキーの組み合わせによって制御される電圧 Ew − マウスピースに吹き込まれた息の量によって制御される電圧 Er − リードの位置(開閉具合)によって制御されるリードの電圧 これらの信号は、12フィートのケーブルによってコンソールに導かれます。ボディへの電源供給もこのケーブルによってコンソールから行われます。 コンソールに送られたボディの信号はさらにプレイヤーの意図や、使用されるシンセサイザーの特性に応じてコンソール上のコントロールで様々に変化させることが可能です。変化された信号はフォーンジャックとパッチコネクターによって外界と接続可能になります。 電源供給ボードはコンソール内に設置されコンソールとボディの両方に電源を供給します。電源は家庭用電源コンセントから供給され110Vと220Vに対応しています。
2.2
ブロックダイアグラム
2.2.1 電源 ウインド・シンセサイザー・ドライヴァは電源供給ボードから供給される+15Vと-15Vによって動作します。接続コードによって±15Vの電圧がコンソールの基板とボディの両方に供給されます。 2.2.2 ボディ(トランスデューサー部分) ボディは(1)トランスデューサーと(2)キーセクションの2つの部分から構成されています。 トランスデューサーはマウスピースの後方に設置されており、空気の流量とリードの位置を読み取ります。標準の息を入れていない状態での電圧はおよそ0.5V近辺で、息の強さによって増加し、最大で10V程度です。リードの標準電圧はレスト(開放)ポジションで-10v、閉めるに従って増加し(クローズ)ポジションでおよそ-0.5Vとなる。 トランスデューサーには2組のLED/フォトトランジスターを内蔵しており、ひとつがウインド、もう一つがリードのセンサーとなっている。 ウインド信号(Ew)はダイアフラムをともなったチェンバーによって気圧を計測することによって発生する。ダイアフラムが変形すると、LEDとフォトトランジスタの間のシャッターを移動させ、それによって光源がカットされると、変形の度合いに応じて信号を生成する仕組みとなっている。リード信号(Er)は同様の仕組みであるが、ダイアフラムの変わりに機械的なレバーが用いられている。(図2-2) 2.2.3 ボディ(キーセクション) キーイングの回路はキーセクションの管体内部を占めるプリント基板の上にある。キーの組み合わせの論理解析をし、アナログ電圧信号に変換する(Ek)。 回路は標準的な1458オペアンプをアナログ機能に、4000シリーズのC-MOSをディジタル機能に使用している。 2.3.1 キーイング回路の解説 +10Vのリファレンス電圧が以下のように生成される。 リファレンス電圧はボディで利用されるのに加えて、ボディ・ケーブルとコネクターによってコンソールにも供給される。ボディにおいてはこの+10Vは加算レジスタのリファレンスとなる。 4066は制御ライン上の論理ハイ(+15)によってアクティブになる双方向C-MOSスイッチである。4066ではOFFの時の抵抗値が10Ωであるのに対してONの時の抵抗値は80Ωとなる。 3種類のスイッチ・アクティベーションと3種類の抵抗値が用いられる。(1)ノン・インバーテッド・プルアップ、(2)インバーテッド・プルアップ、(3)論理アクティベーテッド ノン・インバーテッド・プルアップ型は9つのキーにおいて使われている。回路はC-MOSスイッチを通常時ON状態にする(対応するキーが押されていないとき)。この構成のために(1)半音のための150kΩと(2)全音のための75kΩ、2つの異なる抵抗値が用いられている。 インバーテッド・キーはノン・インバーテッドと同様だが、キーとスイッチの間にインバーター・ゲートが設けられている。これは、通常状態でオープン・スイッチとなる効果をもたらしている。この構成においても異なる抵抗値が用いられており、一つは(1)半音のための150kΩ、もう一つは(2)オクターブの調整がついた12kである。このようなスイッチが4つ設けられている。 3つ目のタイプ、論理アクティベーテッドは2種類のスイッチをコントロールしている。この構成は、押し下げられているキーの組み合わせを監視し信号を半音上げるか、下げるかを判断する。 全てのスイッチ加算レジスタはインバーテッド構成オペアンプ1458において加算される。 加算オペアンプの出力はトランジスター・カレントブースターが伴った他のオペアンプによって再度反転される。カレントブースターの出力は従ってキーイング信号(Ek)になりケーブルを流れてコネクタの方へ出力される。 キーイング回路に加えて、プリント基板はトランスデューサーのバッファ・アンプを含んでいる。バッファは2つの電圧フォロワ・オペアンプ、ひとつはEw、もうひとつはErから構成される。 また、基板上には4つのトリム・ポットが配置されている。 2つはマイスピース側の端にあり、トランスデューサーの信号スロープの調整用であり、ケーブル側の端にある他の2つはオクターブ電圧のキャリブレーション用である。
ここまでのセクションでは、ボディから発生する4つの信号について述べた。それらはEwind、Ereed、Ekey、Erefである。 4つの全ての信号はケーブルとコネクタによってコンソールに送られ、そこで更なる変換が行われる。 以下のセクションでは、コンソールでの変換について述べる。
2.2.4 コンソール 前のセクションで説明した4つの信号はボディ・コネクターからコンソールに入る。コネクターから信号は2つあるマルチ・コンダクター・ケーブルの1本によってマザー・プリント・基板に入る。2本のケーブルはそれぞれ対応するコネクターとともにJAとJBとラベルされており、付属する番号はケーブルのピン番号を示している。 EkはJB5においてマザーボードに入り、U1の半分とトリム・ポットT1のインバーターに送られる。T1はスケールコントロール(P1)のキャリブレーションであり、パネル上のスケールコントロール目盛りを0にしたとき、1V/Octとなるようにセットされている。 インバーターの出力は2つに分岐し、ひとつはJA1ピンにバッファされpitch 1になる。もうひとつの分岐は「パネル・オクターブ・スイッチ回路」とチューニング・コントロールの出力に加算される。それからスケール・コントロール(P1)においてゲイン調整され、JB1にバッファされpitch 2となる。 パネル・オクターブ・スイッチ回路はリファレンス電圧を供給された増幅器と2つのリードスイッチによって構成されている。増幅器はボディとコンソールをキャリブレートするためにT2で調整可能である。 リードスイッチはパネル・オクターブ・スイッチの色々なポジションによって、開いたり閉じたりし、加算ポイントからの信号を繋いだり、解除したりする。正しくキャリブレーションされて状態では閉じられたスイッチはpitch 2信号を1V増加させる。チューニング・コントロールもこのポイントで加算される。 ベンド・ダウンとベンド・アップはpitch 2に変換されたE reedを加算することによって得られる。ボディから直接送られたリード電圧(Er)は、ルース・リードで-10V、タイトリードで-0.5V信号を発生する。 ベンド・ダウンには縮尺されたErがpitch2が直接加算される。これは、リードがタイト・ポジションからルース・ポジションに移動するときにpitch2を下げる効果を持つ。信号をpitch2のレベルによって実際にネガティブにすることができる。 ErはJB6ピンからマザーボードに入り、2つに分岐する。1つ目は変換されバッファされてJA9ピンに出力され、Lip 1となる。したがってLip1はルース・リップで+10Vとなりタイト・リップで0となる。もう一つのパスは抵抗とベンド・ダウン・ポット(P3)によって減衰され可変となる。これは電圧フォロワによって妨げられ、マッチされてpitch 2に加算される。それからJB9ピンにベンドダウン信号として現れる。 ベンドダウンにおけるおおよそのリードの効果はベンドダウンツマミが10の位置にあるときに、タイトリードからルースリードにすると1V下げる。 ベンドアップ信号はErをEkに加算する前に、転位する必要がある。この転位の理由は、ルースリードのときにはErに0V、タイトリードのときに+となるような効果を与えたいからである。このために、Lip1は差動アンプのインバーテッド入力に投入される。 ノン・インバーテッド側はコモンと+15Vの間に繋がれたトリムポットに接続されている。このトリムはパネル表面から調整可能で、トランスデューサーの個体差に起因する変動を補正するために使われる。この信号はbend upツマミと電圧フォロワを経てpitch2電圧に加算される。 ベンドアップにおけるリードの効果は、スライドツマミを10にし、ベンドアップをルースリードからタイトリードにしたときにおよそ1V上昇させる。 この信号はJB8ピンに現れる。 ウインド信号(Ew)はJB12ピンからマザーボードに入り、2つに分岐する。ひとつはバッファされた電圧フォロワを通り、JA6ピンにwind 1として現れる。 もう一つの分岐は、抵抗デバイダに回される。デバイダの反対側はJA8ピンに出力され、パネルに取り付けられたスレッショルド・コントロールに接続される。スレッショルド・コントロールは+15Vと-15Vの供給ラインを横切って設置されている。このことによりEw電圧をコントロールのセッティングによってプラス方向にもマイナス方向にも振ることができる。Ewの一定のレベルを超える電圧によってスレッショルドを設定することができる。この回路にはパネルのトリム(A)によって調整可能なRCネットワークもある。このセッティングによってトランスデューサーのレスポンスを速くしたり、遅くしたりすることが出来る。 生成された信号はインピーダンスのマッチングのために電圧フォロワに送られる。フォロワの出力は2つに分岐する。ひとつはwind 2 スライド(P5)によって増幅コントロールされ、JB4ピンにバッファされる。最終的にこれが wind 2となる。 もう一つの分岐は他からの+2Vの入力とともにコンパレータに投入される。コンパレータの出力はトランジスタのベースに接続される。そのトランジスタのコレクタはJB13ピンに出力されwind gate 1となる。この信号はおよそ+10Vとなる。2V未満のウインド信号では出力は0Vで、Ewが2V以上となれば出力+10Vとなる。 コンパレータの出力はwindgate 1で設定されたゲートに従ってモノステーブルに入力される。モノステーブルのタイミングはwindgate 2のスライドコントロールとS/Lスイッチによって決定される。およそ10mSecから10secの間の変数である。モノステーブルの出力はJB3ピンに送られる。JB3はwind gateスイッチ周辺に設置されたインバータに接続されている。スイッチは3つのポジションがあり真ん中がOFFである。右にするとポジティブのパルスとなり左にするとネガティブとなる。 2.2.5 信号のまとめ Pitch 1 ボディから送られバッファされたキー電圧(Ek) Pitch 2 オクターブスイッチ、スケールコントロール、チューニングコントロールのによって変換されたpitch 1電圧 Bend Down 可変リード電圧が加算され変換されたpitch2信号 Bend up 転位可変リード電圧が加算され変換されたpitch2 信号 Lip 1 反転されバッファされたリード電圧 Wind 1 バッファされたウインド電圧 Wind 2 スレッショルド、RCネットワーク(アタック)、スライドコントロールによって変換されたWind1電圧 Wind gate1 wind 2が2V以上となり超えている間持続する、0Vから+10Vの信号 Windgate2 wind 2が2Vを超えたとき、パルスセッティングで設定された長さまたはwind2信号のどちらか短い方の間パルスがアクティブとなる。 注意 ウインド・シンセサイザー・ドライバーは1年間の保証があります。保証期間中に修理が必要となった場合には製造元にお問い合わせ下さい。ご自身で修理を試みられたり、改造を加えられたりされた場合には保証対象でなくなりますのでご注意下さい。保証期間後に修理が必要になった場合には、認定された技術者に修理をご依頼下さい。
3.1.1 概要説明 シンセサイザー・ドライバーには信号レベル(ウインド・レベル、リード・ポジション、キー、コントロール、等々)いくつかの変動要素がありますので、回路の説明は以下のような方法で行います。 システム全体はボディ電子回路、コンソール・マザーボード、コンソール・電源供給ボードの3つの部分に分かれます。コンソール・マザーボードは6つの回路に分かれます。6つのそれぞれの回路はマザーボード上にそれぞれ影をつけて示した部分にレイアウトされています。 また、各回路について回路図、部品、働きの説明、テスト方法の概要などを示しています。各回路間の連絡状況は図3.1に示してあります。 9つのアウトプットはOff/Onスイッチを経てそれぞれのジャックに導かれています。それぞれのスイッチにはLEDランプが付属しており、Onの状態で点灯します。 ジャック部分の隣には、シンセサイザーとより簡便に常時接続を可能にするためのパッチ・コネクターが用意されています。 3.2 コンソール・マザーボード 3.2.1 コンソールの分解 3.2.2 全体回路図
図3.1 図をクリックすると拡大します。 3.2.3 マザーボード 各回路 マザーボードは6つの回路から構成されています、各回路について分割して詳細を以下に説明します。 3.2.3.1 回路1(PITCH) 示されている電圧は以下の条件下のものです。;ボディがコンソールに接続されどのキーも押されていない、ScaleのスライドVRが0、パネルのOctaveスイッチがLoポジション。
回路1の機能 ボディから送られたキー電圧(Ek)はJB5ピンによってマザーボードに送られる。R3,R2,T1,U1は±10%のゲイン調整を可能にするインバーター回路。信号はR1,R7を通じて分岐される。R1分岐はバッファ・インバーターを経由してJA1に導かれ、最終的にPitch1の出力信号となる。 回路1テスト 上記の回路図に示した電圧を確認する。テスターのリードをQ2のエミッターに接触させ、ボディの2つのオクターブキーを同時に押す。電圧は3.3Vに上昇する筈である。オクターブキーを離す。ScaleのスライダーVRを0ポジションから+にそして−に動かす。電圧はどちらも0からの最大移動位置でおよそ3%変動する筈である。Scaleスライダーを0に戻しておく。 テスターのリードはQ2に触れたまま、コンソールのoctaveスイッチをloポジションからmidへそしてhiへ切り替える。出力電圧は1Vづつ増えるはずである。Octaveスイッチをloに戻しておく。 TuningスライダーVRを0から10へスライドする。電圧は1.3Vからおよそ2.3Vに増えるはずである。Tuningを0に戻しておく。
3.2.3.2. 回路2 Vref
回路2の機能 Eリファレンス信号はJB11ピンから入りU2によって減衰、変換される。T2はパネルのoctaveスイッチのキャリブレーションのためのものでオクターブ・キャリブレーションに±5%の調整を加えることが出来る。U2から信号は3つの分岐に入る。そのうちの2つ(R13とR19)はパネルのoctaveスイッチにより順番にオンになる2つのリードリレーに導かれる。OctaveスイッチがmidのときR13分岐はリレーを経由して合算ポイント(A)に行き、それによってpitch2に1Vを加算してJB1に至る。Lowポジションの時には分岐R13とR19はどちらもインアクティブとなり、highポジションではどちらもアクティブとなる。
回路2のテスト 回路2のテストは回路1のテストによってカヴァーされている。
3.2.3.2 回路3 LIP 回路3の機能 リード電圧(Er)はJB6ピンから入力される。Erはルース・リード(完全開放)時およそ−10Vでタイトリード(最も噛んだ状態)で−0.5Vまで上昇する。D3は順方向で0.6V必要とする。したがってErで0.6Vを下回る値は0Vと見なされる。この電圧は2つに分岐し、そのうちのひとつが統一ゲイン・バッファ・インバータを通ってJA9のLip1に至る。Lip1は変換後、ルース・リードで+10V、タイト・リードで0Vとなる。 もうひとつの分岐はR23によって減衰されbend downスライダー(P3)に至る。ErはP3ライダーから電圧フォロワ(U4)へ入りインピーダンスがマッチングされ加算抵抗R58においてベンドダウン信号を作るためにpitch2と加算される。
回路3のテスト ルース・リードの状態でbend downスライダー(P3)とbend upスライダー(P4)を最大のポジションにし、示す電圧を計測する。テスターをJA9に接触、リードレバーをクローズしたりオープンにしたりすると、電圧の振れは、およそ+10Vから0Vそして+10Vに戻るはずである。
テスターをU4/R58につなぐ。ルース・リードでbend downスライダーを0から10そして0に戻す。電圧は0から−4.7Vへそして0に戻るはずである。
テスターをU5/R55につなぐ。Bend upスライダーを10にセットする。パネル面のreed trimを調整して0V付近になるようにする。タイト・リードにして電圧がおよそ+4.7Vに振れることを確認する。リード・トランスデューサの個体差のために、ここに示した電圧値はさほど厳密でなくても良い。
3.2.3.4. 回路4 Bend 回路4の機能 回路4は2組の分岐から構成されており、それぞれが2つのインバータと1つの全体の統一ゲインを含んでいる。
分岐1はU12,R56,R57,R59,R60から構成され、回路1からのpitch2信号を、回路3からのbend down信号に加算する。
分岐2はU7,R49,R50,R51,R52とバッファとしてのQ9から構成され、pitch2信号を回路3からのbend up信号に加算する。
分岐1の出力は、リードやキー電圧とともに、いろいろなコントロールのセッティングによってプラス側、マイナス側どちらにも振ることができる。
分岐2の出力はコントロールのセッティング、リード、キー電圧と関係なく、常にプラス出力である。分岐2はピンJB8からbend upとして取り出される。
3.2.3.5. 回路5 wind 回路5の機能 ウインド電圧(Ew)はボディーからピンJB12を経由してマザーボードに入り、2つに分岐する。分岐1はバッファされた電圧フォロワ(U5,Q6)から構成され、ピンJA6に至る。これはWind1となる。
分岐2ではEwはR33とR34からなる電圧ディバイダーへ導かれる。 R33はピンJA8へ至る。 JA8はパネル面のthreshold controlのライダーに回り、+と−15Vの間に接続される。Threshold controlはEwのオンになるレベルを調整することによってEw信号にバイアスを与える。 信号は次にピンJA11, JA10,JA7を経由してC8とA(Attack)と書いてあるパネルのトリマーによって作られるRCネットワークに導かれる。JA10から電圧フォロワに投入され、再び2通りに分岐する。
分岐1はマイナス電圧のブロッキング・ダイオードとして機能するD5とWind2スライドVRから構成される。 ここからピンJB4にバッファされた電圧フォロワとして投入され、Wind2となる。 もう一つの分岐は回路6に入る。
回路5のテスト JB12にテスターを触れて、マウスピースに息を吹き込む。息を入れない状態では電圧は0.5Vで、息を強めるに従って徐々に電圧が上がり最大でおよそ+10Vである。 JA6に現れるWind1信号はこの信号をバッファしたものである。 テスターをD5/P5に触れる。パネルのthreshold controlのfccwをまわす。電圧は0Vとなるべきである。ゆっくりとthreshold Cwをまわす。大体真ん中くらいのポジションで電圧は+になるはずである。コントロールを真ん中くらいにしておいたまま、マウスピースに息を吹き込む。電圧は+方向に上がってゆくはずである。同様に、10 Wind2(JB4)のP5でもD5/P5と同じことになる。
3.2.3.6. 回路6 Wind Gate 回路6の機能 U9/D5からの信号はR45を経て回路に入り、U10においてR37,R38デバイダーからの+2Vと比較される。信号が+2Vを上回る場合にはU10は+12Vから−12Vに変化しトランジスタQ8をオフにする。その結果Windgate1(JB13)を0Vから+10V信号に変化させる。
U10がマイナスからプラスに変わる過程で、555(U6)の2番ピンにトリガーパルスが送られる。また555は4番ピンからのWindgate1によってもアクティブにされる。これらの条件があると555(U6)の3番ピンはハイ(+10V)にwindgate1のインターバル設定と6番と7番ピンの持続時間のいずれか長いほうの間持続される。 持続時間はR40,P6,C3,C6によってつくられる。C6はS/Lスイッチのポジションによって作動、不作動を選べる。SポジションではC6はアウトとなり、P6レンジの持続時間は短くなる。Lにすれば逆の結果となる。 U6の3番ピンはJB3に導かれパネル上にワイアリングされた論理インバータにつながる。Windgate2のスイッチはインバータのどちら側を選ぶかを決定し、それがアウトプットジャックに出力される。右側のポジションではパルスは0から+10で、左側では+10から0である。センターポジションではオフとなり、ジャックから信号は切り離される。 3.3 ボディ 3.3.1 ボディ分解と組み立て
分解 (1) 本体を横向きに平らな場所に置く (2) 片方の手でしっかりと下部(ケーブルの出ている側キーの下)を握る。もう一方の手でアルミニウム製のエンドピースを緩やかに捻りながら外す。いずれの方向にも半回転以上捻ってはいけない。 (3) ビニール製のブレスチューブを中心の穴から引き抜き、エンドピースについている2本のOリングを外してエンドピースを取り外す。 (4) 再び、管体下部をしっかりと握り、もう一方の手で、トランスデューサ部分のマウスピースの少し下の部分を掴む。2つの部分を少しだけそっと捻る。はじめにシールが剥がれる感触があり、そこから少し捻りながら2つの部分を分割する。いずれの方向にも半回転以上捻ってはいけない。
2つの部分に分割するときには、内部の配線が最少量のハンダで行われているため、これをちぎらないように最高の注意をはらうこと。これでボディーのネジを全て外せば、ボディ基板は管体から引き出すことが出来る。ウインドとリップのトランスデューサの修理・調整は工場でのみ可能であるので、これ以上分解しないこと。(筆者注:当然工場はもう存在しないので、問題があれば自分で解決するしかありません。)
ボディからビニール製のエアーチューブを引き抜く。2個のオクターブキー付近のネジを含む7個のネジをボディから外す。ボディ上端の内側にオクターブキーの接点が固定された真鍮板(およそ12mm幅、2mm厚程度)があるので小さな先の細いラジオペンチでこの真鍮板の端を掴んで、まず基板のある方向に、そして接点が内部に引き込まれたのを確認してから、配線の余長の許す範囲で管体の外に引き出す。
ボディーのプリント基板はこれで外部に引き出しされ、メンテナンスが可能となる。
3.3.2 ボディ電子回路
図3.2参照
スイッチS1からS11までと2つの#と2つの♭がボディの表面にある11のキーを示している。X2とX4スイッチはオクターブキーである。このスイッチはそれぞれのキーが押し下げられることにより、ボディの穴を貫通している銀接点とキーが接触してボディと短絡する。
回路1の機能 S1,S2等はボディキー接点を示しており、押し下げられると、アースであるボディにショートする。4066はアナログであり、コントロール信号が論理1(+15V)であるときON状態となり、論理0のときOFFとなる。
キーが押されていないとき、全ての4066コントロールラインは100KΩのプルアップ抵抗により+15Vとなっている。このため4066スイッチはON状態となっており、それぞれリファレンス電圧に1%の抵抗を通じて接続され、加算アンプへのマキシマムカレントの流入が起こる。それぞれのスイッチが押されると、それに応じたコントロールラインが0となり、アナログスイッチはオフの状態となる。これによっておこるカレントの増分はトータルから減算されることになる。カレントが増加すれば、全てのキーが押されるまでキーが押されるたびに減算が続き、全てのキーが押し下げられたところでカレントは0になる。
回路1のキーはピッチ・コントロール電圧(Ek)をキーが押し下げられることにより下げてゆく働きをしている。150kを伴うスイッチは半音下げ、75kを伴うスイッチが全音を下げることになる。
回路2の機能 回路2はコントロールラインのインバータが異なっているのを除けば回路1と同一である。このインバータの違いはスイッチの常時ONの状態を常時OFFの状態への違いを生んでいる。このことによって、ピッチ・コントロール電圧(Ek)はキー押し下げにより低下ではなく増加する。 トリム・ポット、P1とP2が4066の”オン”抵抗を補償するために設置されている。
回路3の機能 この回路においてスイッチのコントロールラインはU6,7,9,10の組み合わせロジックによりアクティベートされる。 U7へのコントロールラインはU10またはU9が0になるときにアクティベート(論理1)される。U10またはU9がともに0になるのは、それぞれのインプットが論理1になるときである。下の論理テーブルがU6,9,10の論理0を示している。 S1 S2 S3 S6 S7 S8 S11 ○ ● ○ ○ ○ ○ ○ U10=0 ● ○ ○ ● ○ ○ ○ U9=0 ● ○ ○ ○ ○ ○ ○ +Bis U6=0
U9とU10の出力はU7によってNANDとされる。 U9またはU10が0であるときU7は1となり、スイッチをonにし、Ekを半音分増加させる。 U6は、S1とBisキーのみが押されたとき0となり他の全ての条件において1となる。このため、Ekはこの条件で半音分低くなる。
回路5の機能 回路5は2系統のインバーテッド・アンプであり、出力にカレントブースターを伴っている。この回路の出力はケーブルを通じてコンソールへフィードされ、Ekとなる。
2つの付加的なオペアンプ(U13)がフォロワーに用いられ、ウインドとリードのトランスデューサ・シグナルのバッファとして機能する。これらもまたケーブルによってコンソールへ導かれそれぞれEwとErとなる。
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