Lyricon Maintenance

 


Lyricon One
のメンテナンスとリペア


Oneは徹底解剖編においても述べたように、他のモデルとは大きく異なっており、トランスデューサーを除けば共通点は殆ど無い。原理は複雑だが、電子回路的にはシンプルな構造で修理はそれほど困難ではない。

ボディに関しては他のモデル同様、トランスデューサのダイアフラムの硬化が一番の問題点なので、この交換・防湿処理が一番のキモとなる。ボディを分解する場合、他のモデルとやや異なりテールピースはラバーOリングによる固定ではなく、内側からスチール製のCスプリングで拡張しているので、傷をつけないようにテールピースを外すのに気を遣う。また、トランスデューサ部分のバレルが固着して外れないケースがある。

 トランスデューサとボディ基板は配線されているので。バレルが取れないと全体が分解出来ずに大変困る。そこで、どうしても取れない場合の非常手段として、下記のような方法を試したので記録しておく。

1.   ボディからキー全て、テールピース、マウスピースを外す。

2.   ボディ基板をボディに固定しているスクリューを外す。

3.   基板をテールピース側からつまんで少し引き出す(引きすぎるとトランスデューサとの間の結線をちぎったり、ボードを破損したりするので注意)

4.   オクターブキーの接点穴からトランスデューサの方に向けてシリコン系の浸透潤滑スプレーを細いノズルを使ってスプレーし、しばらく放置する。

5.   トランスデューサをマウスピース側から、塩ビパイプなどを使って壊さないように強く均等な圧力で下向きに押す。 本来は裏側で踏ん張っているプレートスクリューを緩めないと、圧縮されたゴムが壁側に押し付けられているので、かなり固いが、潤滑スプレーのお蔭で下方向にずるずると動く。

6.   ボディー基板にあたらないように、ボディ基板もすこしづつ下方向に抜き出す。トランスデューサがバレル部分より下に動けばあとは内径が広くなるので楽にテール方向に抜けるはずだ。こうして、トランスデューサと基板を繋げたままテール側に完全に抜き出す。

7.   管体だけになったらマウスピース部分のプラスチックのカラーを抜き取る。(これも固いかもしれないが、反対側から径29mmくらいの円板(コイン状のものが良い)と木の棒を突っ込んで、木の棒をプラハンなどで叩けば取れる。

8.   今度は、ボディの内径とほぼ同じ=バレルの内側のカラーの外径と同じ径の円板を用意し、金属だけとなった本体のバレル接合部分をバーナーで熱しながら円板と木の棒を突っ込んで木の棒をハンマーで叩くとバレルはボディから離れる。あまり強く熱するとキーポストのロウ付けやバネに影響するので、注意して行う

 

Oneのサービスマニュアルは詳細な調整のノウハウには一切触れておらず、ここは筆者の経験値からということでご理解いただきたいと思います。

 

オクターブキーを押したときの音程ずれがある場合

Oneにはボディ側で調整できるポットはありません。基本セッティングで演奏できる状態にセットし、音声出力をチューニングメーターに繋ぎ、コンソールのパネルを外して基板(Input Board)のP12を回し正しいオクターブジャンプとなるよう調整します。スケールもこれで合う筈です。

 

音は出ているが、フィルターをONにしてもフィルターが全く反応しない。

インプットボードのランプが点灯していれば、フィルターが効かないだけで音は出ます。フィルターボードの電球が切れている可能性が高いです。フィルターボードのランプカバー(黒いフタ。基板面には接着剤で固定されている。古い個体では脱落しているものもあるが、2組ある光センサが相互に干渉するのを防ぐ為に元通り接着しておく必要がある。メンテナンスのことを考慮すればビニール・テープなどで固定した方がよい)を外して、確認します。全く点灯しない場合にはランプを交換する必要があります。ランプは基板に直にハンダ付けされていますので、交換の際はハンダ付け作業が必要です。純正ランプはCM330と呼ばれているMidget Flange Lamp14V 0.08Aです。日本ではなかなか見つけるのが難しいかもしれませんが、表示用ランプT5/F6などという名前で販売されています。また、この際T5型のねじ込み式超小型ランプなどに変えて交換を容易にする手もあると思います。

音が出ない

インプットボードのランプ切れを疑います。フィルターボードと同様の作業となります。

 



直線上に配置